生後、3ヶ月くらいまでの赤ちゃんは、眠りながらでも自分の唇をチュチュと吸っていることがあります。
赤ちゃんの、口の中に何かモノが入ってきて反射的に吸うこのような動作を、「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」と言います。
新生児に備わる原始的な反射の一つです。
その子が特別に食いしん坊なわけではなく、生命を維持するために原始的に備わっている反射行動です。
この吸啜反射は、いつからいつまで、またどんな場合に起こる反射なのでしょうか?
今回は、この「吸啜反射」について調べてみましょう。
吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)とは!?
赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲む時に、口の中に入った乳首からおっぱい等を飲む行動を吸啜(きゅうてつ)といいます。
実はこの「吸う」運動は、赤ちゃんがママのお腹の中にいる時から起こっています。
赤ちゃんが胎生 9~10 週ころから、羊水の中で口を開けたり閉めたりする運動や舌を動かす運動が始まっていいます。
そして、胎生12 週ころからは飲み込む動作が、胎生24 週ころには吸うことができるようになっているそうです。
吸啜反射などのおっぱい等を、「吸って飲む」ために必要な反射は胎生期に発達していて、出生直後から哺乳を行うことができるのです。
そうはいっても、安定しておっぱいやミルクを飲み込むためには、嚥下(飲み込み)と呼吸のバランスがとれていなければなりません。
出生したての時は、まだ嚥下と呼吸のバランスが不安定で、安定するまでには生後4~5日が必要です。
赤ちゃんがおっぱいを飲む時、舌は口腔内の上の方で乳首を押し付け、舌の先から舌の根っこの部分に向けて蠕動様運動(ぜんどうよううんどう)を行います。
そして、口腔内に陰圧をつくることで母乳等を自分の体の中に取り込むことができるのです。
吸啜反射は満腹だと弱くなりますが、眠りながらでも自分の唇や、自分の手などをチュッチュッと吸う子もいます。
反射だけ見ると「おっぱいが足りていないのでは?」と心配になりますよね?
でも、吸啜反射だけでおっぱいが足りていないという判断は禁物ですよ。
心配であれば体重を測って判断しましょう。
体重が増えていれば、そんなに心配することはないです。
赤ちゃんは満腹というのがわからないことも多いので、
- 満腹なのにおっぱいを与えられると飲んでしまう⇒
- 結果的に吐き戻してしまう⇒
- その結果、ママが心配する
というサイクルになってしまいます。
赤ちゃんの様子や体重をよく観察してみましょうね。
また、吸啜反射に似ている反射で、追吸反射(ついきゅうはんしゃ)という反射があります。
これは、「唇や頬に指や乳首が触れると、それを追いかけて探すように口に含もうとする反射」です。
知らず知らずのうちに、赤ちゃんは物を飲むという、動物的に必要な行動を取っているんですね!
原始反射とは!?
このように、赤ちゃんは絶対に必要な運動を「反射」という形で生まれながらに備えていますが、なぜでしょうか?
実は、人間は生理的早産なのだそうです。
他の生物は大抵、生まれた後すぐに立ち上がり、歩き始めます。
生まれた直後の小鹿が立ち上がるシーンなど、テレビで見たことのある方も多いのではないでしょうか。
そんな他の哺乳類と比べ、人間の赤ちゃんはかなり無力で未熟な状態で生まれてくる、ということです。
確かに人間の赤ちゃんは、周りの大人に世話をしてもらわなければ、一人では何も出来ませんよね!?
この1人で歩けるようになるまでの1年間を、生理的早産というんですね。
そしてこの1年間は、日本では法律的に児童福祉法で「乳児」と区分されています。
無力で未熟な状態な乳児ですが、原始反射という機能が備わっているのですね。
原始反射とは!?なんのためにあるの?
生まれたばかりの赤ちゃんは、意図的に物を掴むこともできませんし、自分で移動をしたり、ミルクを飲んだりすることもできません。
全く無力な状態です。
でも、この未熟な赤ちゃんが初めての環境に適応して生きていくために、生まれつき便利な機能が備わっています。
先ほど紹介した、赤ちゃんの口元を乳首に持っていくと、くちゅくちゅと口を動かし、乳首を吸うような仕草を見せる吸啜反応もその一つです。
この吸啜(きゅうてつ)反応は、乳首ではなく指や他の物であっても、口元に触れると、赤ちゃんの意志とは無関係にこのような反射が起こります。
こうした反射のことを「原始反射」といいます。
赤ちゃんの原始反射は、このように生命維持の目的もありますが、それだけでなく、
- 反射を繰り返すことによって中枢神経系が発達する
- その結果、筋力や知的能力も発達する
- 無意識的な動きから意識的な動きができるというところに繋がっていく
というものでもあります。
その反射で起こる動きが赤ちゃんの意志で出来るようになった頃に、原始反射が消えるのです。
反射は、大脳を使わずに起こるものです。
無意識に起きる原始反射が消えるということは、脳幹が発達し、大脳の発達準備が出来たということでもあります。
意識的な動きは大脳が命令しているからです。
ですから、原始反射は赤ちゃんの成長が順調であるかどうかを見る指標とも言えます。
出現する時期や消失する時期、原始反射が左右対称かどうかなどによって、発達障害や脳機能が正常に発達しているかどうかを判断する指標にもなるのです。
原始反射は、赤ちゃんの成長過程において、なくてはならない準備段階でもあるし、成長が順調であるかどうかを見極める判断材料にもなるということです。
赤ちゃんの原始反射にはいくつかありますので、ご紹介しますね。
その他の原始反射
新生児に備わる反射の多くは、生後約6ヶ月以内に消失し、随意運動(意識的な動き)に代わっていきますが、色々な意味で、それまでは新生児の行動の中で重要な動きになっています。
新生児にあるたくさんの反射のうち、有名な反射をいくつかご紹介しますね。
これを参考に観察してみてください♪
出生後すぐに母乳やミルクを飲むための反射です。
- 追吸反射(ついきゅうはんしゃ)
新生児の口の付近に軽く触れると、その方向に顔を向け、口で探すような反応をする。
この反射は乳首の位置を探しあてる行動で、生後2~3ヶ月で消失する。
- 補足反射(ほそくはんしゃ)
口に乳首や指などやわらかいものが触れると、くちびると舌で口に触れたものをとらえる。
この反射のおかげで、乳首をしっかりとくわえることができる。
- 吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)
口で乳首や指をくわえると、舌をリズミカルに動かして吸う動き。
これは母乳やミルクなどを吸うための反射で、このあとに現れる嚥下反射(えんげはんしゃ)で、吸った母乳などを飲み込む。
光や音、自分の体勢など、周囲から刺激を受けたときに起こる反射。
びっくりしたように両手を広げ、指もすべて伸ばして開き、何かに抱きつくような左右対称の動作をする。
生後0~3ヶ月頃によく見られるが、その後は徐々に見られなくなり、首がすわる6ヶ月頃になると消滅することが多い。
それ以降も反応が残っている場合は、脳の障害が疑われることもあるので、心配であれば病院で相談してみましょう。
手の平にものが触れると、ぎゅっと握り締める反射。
ものを握ることができるようになる生後 4 か月ごろになくなる。
足の裏も同じような反射があって、足の裏を圧迫すると、足の指も含めて内側に曲がる反射が起きる。
足の反射は、自分の足で立てるようになる生後11ヶ月ごろになくなる。
足の裏の外側を、かかとからつま先に向けて尖ったもので刺激すると、足の親指が外側に曲がり、ほかの指は扇のように広がる反射。
1歳半から2歳くらいまでに見られる。
赤ちゃんの両側の脇の下を支えて、足の裏を軽く床に触れるようにして体を前かがみすると、歩いているように足を交互に動かす動作。
生後2か月頃まで見られる。
ここでご紹介したのは、一例ですが、色々な反射がありますね。
知っておくと、大人とは違う赤ちゃんの動作にも、違った視点で見ることができますね!
まとめ
- 吸啜反応(きゅうてつはんしゃ)は、赤ちゃんがおっぱいなどを吸う動き
- 追吸反射(ついきゅうはんしゃ)は、唇や頬に指や乳首が触れると、それを追いかけて探すように口に含もうとする反射
- 原子反射とは、生まれつき備わっているもので、様々な種類があるが成長とともに消えていく
- 周りの大人に世話をしてもらったり、1人で歩けるようになるまでの1年間を、生理的早産という
赤ちゃんが生まれてからの1年間の成長は目覚ましくて、新米ママにとっては、原始反射の出現や消失、随意運動、その他にも首すわりや寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ち、歩行と、成長の証がいっぱい!
でも赤ちゃんの発達のペースはそれぞれ。
早い遅いにあまり神経質にならず、その子なりのペースを見守りながら、赤ちゃんと一緒に成長の過程を楽しんでいきたいですね。
こうやって考えてみると、人間ってよくできてるんだなぁ!