貴方は揺さぶられっ子症候群をご存知ですか?
この症例は、アメリカで1970年代に初めて報告されていて、1980年代には児童虐待の指標として採用、日本では2002年から母子手帳でも注意を呼び掛けています。
「揺さぶられっ子症候群」がどういう症状で、どういう場合に起こるのか、予防のために気をつけることは何なのか、見ていきましょう。
目次
揺さぶられっ子症候群ってどういうもの?
揺さぶられっ子症候群とは?
揺さぶられっ子症候群とは、赤ちゃんの体を激しくゆすったりして、脳の組織に加速度損傷と打撃損傷が加わり、頭蓋内に出血を起こす病気のことです。
具体的には、次のような状態をいいます。
確認できる体の傷はなく(あったとしても軽い傷)
- 網膜出血
- 硬膜下血腫またはクモ膜下出血
を起こしている状態です。
医学的には、2歳以下の乳幼児とされていますが、生後半年までの時期は特に注意が必要です。
大人ならば、たとえ強く揺さぶられても首の筋肉が強いので、頭を支えることができますが、赤ちゃんは首の筋肉は弱いのに、頭が大きくて重いのです。
そのため、赤ちゃんを激しく揺さぶることで頭もさらに激しく揺れ動き、赤ちゃんの頭蓋骨の中で脳が何度も頭蓋骨にぶつかり、血管などが引きちぎられ、脳や目に深刻な損傷を引き起こしてしまいます。
一説では、揺さぶられっ子症候群を発症した乳幼児のうち約3割が死亡し、4割以上に失明や視力障碍、言葉の遅れや学習障害、けいれん発作、知的障害、脳性麻痺等の後遺症が残ってしまう可能性があるとも言われています。
どんな症状!?その時はどう対処したらいいの!?
次の症状のうち、いくつかが出ていたら、揺さぶられっ子症候群の可能性があります。
その場合は、すぐに脳外科医のいる病院などを受診してください。
処置は早ければ早いほど回復の可能性が高くなり、処置が遅ければ遅いほど、重い障害が残る可能性が高くなります。
心配であれば、救急車を呼ぶなどして、早く病院へ連れていきましょう。
- ミルクを飲まない、又は吐いてしまう
- 機嫌が悪い、泣かない、笑わない
- 目の焦点が合っていない
- 痙攣(ひきつけ)を起こした
- ずっと眠っている
- 顔色が悪く、ぐったりしている
「ずっと眠っている」というのは、半日以上ミルクなどを飲まずに、起こしてもすぐ寝てしまう状態です。
お昼寝や夜間でも6~8時間続けて眠る赤ちゃんもいますが、たいてい途中でミルクやおっぱいを飲んでいます。
そうではなく、こんこんと眠り続ける時は注意が必要です。
揺さぶられっ子症候群は、どういう場合に起こる?その原因は?
揺さぶられっ子症候群はなぜ起きるの?
赤ちゃんが生まれた時の脳の大きさは大人の3分の1くらいですが、成長に伴ってどんどん大きくなっていきます。
このような脳の発達に備えて、赤ちゃんの脳は頭蓋骨の中に浮いているような状態になっています。
そのため、激しく揺さぶられると頭蓋骨の内側に何度も脳が打ちつけられ、脳の血管や神経に損傷が起きてしまうのです。
そのような赤ちゃんの頭の状態に加えて、赤ちゃんは頭を支える首の筋力が弱く、頭が大きく重いという特徴があります。
そのため、強く揺さぶられると、大人の何倍もの衝撃を受けることになってしまい、揺さぶられっ子症候群を発症することになってしまうのです。
こんな時に起きてしまいます
このように赤ちゃんを扱ったり、遊んだりすることはやめましょう。
- 頭が前後にがくがく揺れるほど強くゆする
- 赤ちゃんを空中でキャッチボールする
- 20~30分も体全体を揺さぶり続ける など
頭や首をしっかり支えて、ゆっくりと普通にあやす分には問題ありません。
揺さぶられっ子症候群が起こる背景は様々ですが、一部には児童虐待という見方もされています。
その中には、良かれと思って赤ちゃんのお世話をしたり、遊んでいたつもりが、揺さぶられっ子症候群と診断されてしまい、児童虐待とみなされて親子が引き離された事例もあります。
そうなってしまったら、赤ちゃんにとっても家族にとっても二重の悲劇となってしまいます。
そうならないためにも、赤ちゃんをあやしたり抱っこしたりする時は、赤ちゃんの頭がぐらぐら揺れていないか、揺さぶりすぎていないか、充分に気を付けましょう。
揺さぶられっ子症候群を発症した状況の中には、泣き止まない赤ちゃんをなんとか泣き止ませようと焦って強くゆすってしまった、というケースも多いようです。
特に、ふだん赤ちゃんのお世話をする機会の少ないパパが子守を任された場合など、赤ちゃんが泣き止まないと、気持ばかりが焦ってしまうことでしょう。
また、日本では2002年から揺さぶられっ子症候群について母子手帳への記載が始まりましたが、それ以前に子育てしたおじいちゃん、おばあちゃんは、揺さぶられっ子症候群という病気を知らない可能性もあります。
赤ちゃん扱い方について、おじいちゃんおばあちゃんを含めて、家族で知識を共有することが大切です。
揺さぶられっ子症候群を起こさないためには?
どのくらいまで大丈夫なのか?
こんな風に読んでくると、私は大丈夫?と心配になってしまいますよね?
どの程度揺すると発症するのでしょうか?
揺さぶられっ子症候群を発症してしまうNG行動には、次のような目安があります。
- 身体を20分間以上、前後左右に揺する
- 身体を10秒、5回以上過剰に揺する
- 赤ちゃんを空中に投げてキャッチするのを繰り返すような「高い高い」をする
- 頭を2秒間に5回以上のスピードで揺する
- 両手で赤ちゃんを掴み、急に持ち上げてゆっくり降ろすを何度も行う
- 揺りかごに入れて激しく何度も揺するを繰り返す
読んでいただくとわかるように、かなり激しい動作ですよね?そんなに揺すったら危ないのでは?と心配になるレベルです。
意識的にこんな動作をしている人はあまりいないと思います。
ですが、赤ちゃんが泣き止まずお世話をしている大人がイライラしてしまった時、泣き止ませなければいけないと焦って、無意識に強く揺さぶってしまうことがあるのです。
泣き止まなくてイライラした時、揺さぶっても泣き止みません!!
赤ちゃんのお世話をしていると
- ミルクは飲んだばかり
- オムツも替えた
- 暑くも寒くもない
- 見る限り体にも異常はなさそう
それなのに泣き止まない時、ありますよね?
私の方が泣きたくなっちゃう。
そんな時は、いったん赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、深呼吸してみましょう。
又は少しの時間、いったんその場を離れることも有効です。
赤ちゃんの泣きに対応してあげることも大切ですが、お世話をしてあげる人がリラックスしてゆとりをもっていることはとても重要です。
また、もし自分が適切に対応できていないのでは?と感じたら、いつでも地域の保健センター、児童相談所、子育て家庭支援センター、虐待防止センターなどに相談しましょう。
現代は核家族が多く、またシングルマザーという方もいらっしゃるでしょう。
またほとんどの方が自分自身、子供時代を核家族で育っているはずですから、赤ちゃんとの接し方に慣れていないのは当然です。
赤ちゃんのためにも、あなた自身のためにも、心配があれば、恥かしがらずに早めに適切な機関に助けを求めてみてください。
厚生労働省でも、「赤ちゃんの泣きへの対処と理解のために」という動画を配信しています。
赤ちゃんの泣きへの理解と、強く揺さぶられた時にどういうことが起こっているのか、わかりやすく解説されていますので、ぜひ一度、見てみてくださいね
(引用:厚生労働省「赤ちゃんの泣きへの対処と理解のために」動画)
バウンサー、たかいたかい、ベビーカーは大丈夫?
ところで、先ほどの「揺さぶられっ子症候群予防のためのNG行動」の中で、「たかいたかい」をする、という項目がありましたが、それを見てぎょっとされた方も多いのではないでしょうか?
私自身も「たかいたかい」した経験があり、ドキッとしました。
ですがここで、NG行動として紹介されているのは、あくまでも赤ちゃんを空中に投げてキャッチするのを繰り返すような、激しい「高い高い」です。
月齢が大きくなり、首が座っていれば、両脇をもって、普通のスピードで高い高いする分には大丈夫です。
同様に、赤ちゃんをあやすときに多少揺らしたり、バウンサー(ゆりかご)や車に乗っていて少し強めに揺れた程度では、揺さぶられっ子症候群は起こりにくいとされていますので、ご安心くださいね。
ただし、バウンサーを揺らす時はあまり激しい勢いでは押さない、車に乗る時は必ず月齢に合ったチャイルドシートに乗せることが前提ですよ。
揺さぶられっ子症候群の予防のポイント
揺さぶられっ子症候群にしないために、日常生活の中での具体的な予防のポイントをまとめました。
- チャイルドシートは月齢に合うタイプを正しく装着する
- 車に乗るときは1~2時間おきに休憩をとり、チャイルドシートから降ろしてあげる
- 首の座っていない乳児の移動は、なるべく水平型のチャイルドシートで使う。さらにドーナツ型クッションなどで頭を固定する
- 泣き止ませるために、体を前後に強く揺さぶるのはNG(特にパパがやりがち!)
- 赤ちゃんを2人でキャッチボールのように投げたり、天井に高く投げて受け取るなどの遊びはNG
- げっぷさせる時は、首を固定してやさしく背中をさする(強くたたかない)
- 赤ちゃんの扱い方について、家族で知識を共有する
- 自分なりのストレス解消法・リラックス法を持つ
揺さぶられっこ症候群の症状って?たかいたかい、ベビーカーは大丈夫なの?まとめ
揺さぶられっ子症候群の症状や対処法などについて、まとめます。
- 揺さぶられっ子症候群とは、赤ちゃんの体を激しくゆすったりして、頭蓋内に出血を起こす病気のこと
- 2歳以下、特に生後半年までの赤ちゃんは特に注意が必要
- ミルクを飲まない、目の焦点があっていない、痙攣(ひきつけ)などの症状があれば、すぐに病院へ
- 予防のためには、体を激しく揺すらないこと
- バウンサー(ゆりかご)や「たかいたかい」、ベビーカー等を激しくない通常の使い方で使う分には問題ない
- 車に乗る時は月齢に合ったチャイルドシートに乗せ、1~2時間おきに休憩を取る
- 赤ちゃんの扱い方について家族で知識を共有したり、自分なりのリラックス法をもつ
このまとめを参考に、揺さぶられっ子症候群を予防しながら、赤ちゃんとの生活を楽しんでくださいね。
僕も気をつけるよ!
おばあちゃんにも知らせないと!